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海外小説三昧

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海外小説三昧

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①デュマ 三銃士 (1844) ?????

映画を見に行きたいので、まずは準備。ひさしぶりに「三銃士」を開く。
しかしそれがねぇ。
楽をしようと思ったわけではないのだが、手もとにあるのは岩波少年文庫版(上下二巻)である。
読みだしてみると、これが、とてもとても面白い。オバカな三銃士と単純直情のダルタニャン、血沸き肉踊り腹を抱えて笑う。このはなしってこんなに面白かったっけ?例えていえば、このバカバカしいくらいの面白さとくだらなさは、良くも悪くもデルフィニア物語級か。そんなことを書くとデュマに叱られるかもしれないが、そもそも、昔、読んだのも<子ども版>の三銃士で、完全版は読んだことがない。完全版もこんなに面白いのかくだんないのか、わたしには検証しようもないのである。誰か教えてくださいな。それとも「少年」の付かない岩波文庫を読み直すかなぁ。


②ジョセフ・オニール ネザーランド (2008) ☆☆☆☆
ニューヨークで働くオランダ人ハンスは、家族と離れ虚ろな日々を送っていたが、とあることから自分の過去と現在に思いをめぐらせる……PEN/フォークナー賞受賞の喪失と記憶の物語(早川書房)
『二人の亡命者が故郷をみつける新しいみごとな小説』というみごとな書評の文句に誘われて読んだのだが。
この<亡命者>というのは、日本人にとってはとてもとても理解しにくい言葉ではないだろうか。そのことはいつも思ってきたことなのだが、この小説を読み解くキーワードなのだと言われると、ますますわかりにくくなってしまう。おまけに<ポストコロニアル文学>の傑作だと駄目を押されるとなるとなおさら。

オランダ出身の青年が、ロンドンで就職し、結婚する。妻の転職に合わせてアメリカへ移り新たな仕事に就く。2001年の事件をきっかけに、妻と子はロンドンに戻る。残された彼は、まるで異邦人のようにニューヨークの街を彷徨する・・。亡命者というのは、故郷から、家族から、そして自分自身から逃れてきた男のことを指すのだというらしいのだが・・・。つまりは喪失と回復の物語であるのだなと言ってしまうと身も蓋もない。物語は現在進行形ではなく、過去の記憶を遡るかたちで語られていくのであるが、この小説を面白くさせているのはそこかな。それと「もうひとりの亡命者」である友人のクリケット場プロジェクトの挿話も、巧い。


③アントニオ・タブッキ 夢のなかの夢 (1992) ☆☆☆☆
オウィディウスからフロイトまで、「芸術家」たちの《失われた夢》が、肉体をそなえ、息づき始めた。この夢は、誰がみた夢なのか―。現代イタリア文学の鬼才タブッキが、夢を愛するすべての人に贈る、小さな夢の標本箱。(青土社)
「夢十夜」のタブッキ版である。
漱石のは「わたしが見た夢」であるが、タブッキはひとひねりして、オウディウス、ヴィヨン、ラブレー、カラヴァッジョ、ゴヤ、コウルリッジ、スティヴンスン、ランボー、チェーホフ、ドビュッシー、ロートレック、マヤコフスキー、ガルシア・ロルカ、フロイト等・・・、「彼らがみた夢」を、連作短編のかたちで書きあげている。
夢であるから、重厚な物語ではなく、なにやらふわふわしていて掴みどころがなく、それでいて不思議にリリカルでこころに浸みるはなしが20篇、ひとつづつ読んだら20日も楽しめた。


デイヴィッド・ゴードン 二流小説家 (2010) ☆☆☆★
ハリーは冴えない中年作家。シリーズ物のミステリ、SF、ヴァンパイア小説の執筆で何とか食いつないできたが、ガールフレンドには愛想を尽かされ、家庭教師をしている女子高生からも小馬鹿にされる始末。だがそんなハリーに大逆転のチャンスが。かつてニューヨークを震撼させた連続殺人鬼より告白本の執筆を依 頼されたのだ。ベストセラー作家になり周囲を見返すために、殺人鬼が服役中の刑務所に面会に向かうのだが・・・。 (早川書房)
「ポケミスの新時代を担う技巧派作家の登場!」というコピーに、こころを擽られた。
擽られると弱いのは世の常、早速、読んでみましたとも。
・・・巧妙な設定、軽妙な語り口、濃密な展開、作中作などの満載の仕掛け、
たしかにこれでもかというほど盛りだくさんの内容で、あっというまにおなかがいっぱい、面白いのかそうでもないのかもわからなくなるほど!だから読後は、ちょっと空虚な感じ。これって、傑作になりそこねてないかい?!


⑤ウィリアム・サローヤン 人間喜劇 (1943) ☆☆☆☆☆
第二次大戦下のアメリカ、カリフォルニア。マコーリー家では父が死に、兄も戦場へ向かった。家のために、十四歳のホーマーは電報配達の仕事を始めた。働く ことは新鮮で楽しいけれど、戦死の報を届けるのはあまりにも心が痛む。ある日、兄の戦死を知らせる電報がホーマーの手に渡されて…。きびしい現実に身をさ らしながら大人になっていく、少年期のせつなさ、いとしさを描くサローヤンの代表作。(晶文社)
物語の舞台は、1940年代のアメリカ、『イサカ』という架空の町、そこで暮らすアルメニア系移民の一家と町の人々を描く。移民の少年の物語というのは、この作品だけではなく、サローヤンが何度何度も取り上げているテーマなのであるが、だからといって読み飽きることはない。読むたびに、小説を読むたのしさを味あわせてくれる。50年以上も前に書かれた作品であるにもかかわらず、今もみずみずしさとあふれるような魅力を湛えている。





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